国別対抗リレー結果

森林で行うオリエンテーリング競技である「フォレスト競技」の2種目目、国別対抗リレー(以下、リレー)が終了しました。世界選手権のWOCのリレーでは、大会運営の円滑化のために遅いチームの2走・3走を優勝国確定後わずかな時間で一斉にスタートさせる仕組みがあり、昨年の日本チームは男子・女子共にその壁に阻まれていました。
今回のラトビアWOCでは、優勝設定時間が34分のコースを3人分こなすところで、3走の一斉スタート時間の設定がスタートから95分後となっていたため、近年の日本の記録、3走までバトンを繋ぐのが目標となりました。
リレーの出場選手は以下の通りです。
男子
1走:寺垣内 航
2走:結城 克哉
3走:小泉 成行
2018wocrelay_m.jpg
女子
1走:稲毛 日菜子
2走:盛合 美誉
3走:村田 茉奈美
2018wocrelay_w.jpg
早速ですが、リレーの結果です。
★男子リレー 結果
1 ノルウェー 107:26
2 スイス 107:30
3 フランス 107:36
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26 日本 141:52(寺垣内-結城-小泉)
★女子リレー 結果
1 スイス 105:03
2 スウェーデン 105:18
3 ロシア 107:20
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22 日本 166:52(稲毛-盛合-村田)
男子は昨年の29位から3つ順位を押し上げ26位、女子は昨年26位から4つ順位を上げて22位でした。近年の中では最高順位です。
以下、詳細なレース展開です。
レースは女子から始まりました。
女子1走稲毛選手は強いフィジカルと豊富な1走経験があり、トップ選手の集団から大きく離されずレースを展開しようと目論んでいました。その作戦が中盤まで功を奏し、レース全体の約1/3で訪れる会場通過時点で、トップから2分後の集団に食らいつく好走を見せます。
その後、第2集団に食らいつこうとするも藪や傾斜のきついエリアで離され、後続の国に抜かれてしまう厳しいレース展開。それでもなんとか大崩れはせず、全体25位の51:50でフィニッシュ。2走の盛合選手につなぎました。
2走盛合選手は2日前のミドルで蜂に襲われ、出走が危ぶまれましたが、驚異的な回復力と精神力でリレーに出走。また、事前の準備期間にリレーのコース回しを的中させていたため、うまくレースを展開できたようです。
WOCは運営上の都合で、2,3走の繰り上げスタートの時間制限が非常に厳しいのですが、2走盛合選手の走りのおかげで繰り上げの時間ぴったりで繋ぎ、無事アンカーまで途切れることなくチェンジオーバーしました。1走時点から2つ順位を上げ、全体23位でアンカーの村田選手に繋ぎます。(同時に、繰り上げスタートが行われました)
3走村田選手はリレー1種目のみの出場で、しっかりと自分のできることをやって無事競技時間内に完走。(あと3秒とギリギリでした)全体としては22位で、近年は、繰り上げスタート前にチェンジオーバーすることも難しかった日本チームとしては嬉しい結果です。
また、レースとは別の話題ですが、2日前のミドルで盛合が蜂に襲われた際、救助してくれたカメラマンのダディックが会場に居合わせ、お礼を言うシーンもありました。公式のfacebookでも取り上げられています。蜂に襲われた女子選手が、繰り上げスタートギリギリでチェンジオーバーというドラマチックな展開でした。
※facebook記事へのリンク
https://www.facebook.com/woc2018latvia/photos/a.983141738484043.1073741828.983127065152177/1365507980247415/?type=3&theater
次に男子のレース。
男子1走寺垣内選手は、2015年のスコットランドのWOCのリレー1走で好成績を残しており、同じく集団についていく走りをして中盤まではスピードに乗ったナビゲーションを展開していました。終盤、集団から少し離れますが、ベルギーやハンガリーなどのヨーロッパ諸国を先行してフィニッシュ、39か国中25位で2走の結城選手に繋ぎました。タイムは44’12でした。
2走の結城選手は、序盤でリズムがつかめずスロバキア、イタリアなどに抜かれますが、ハンガリー・ベルギーと同じタイミングで中間を通過。その後、集団から離れたもののベルギーのミスの間に追いつき、ロングレッグでベルギーを出し抜いて先行、全体28位で3走小泉選手にチェンジオーバー。寺垣内・結城の2人合計で繰り上げスタート時間までにフィニッシュし、無事3走にチェンジオーバーすることができました。タイムは48’42でした。
3走小泉選手は序盤ベルギー、アメリカと競り合いになりますが、中盤の見通しの悪いエリアを無難にこなし、ミスを犯した他国を先行。以降は順調にレースを進め、出走時に5分の差があったカナダ、イスラエルと1分差まで詰め寄ります。終盤のロングレッグのルートチョイスで、最後までその差は詰まりませんでしたが、最終的に順位を2つあげて全体26位でフィニッシュ。
男女ともに3走までチェンジオーバーし、また海外の中堅国と競り合いながら一部の層に勝利を収めることができたのは、非常に大きな収穫でした。中国やカザフスタンなど、アジア諸国からの参加も多かった中で、最速のタイムを記録できたのも、非常に喜ばしい結果です。
以下、出走した選手のコメントです。
女子1走:稲毛日菜子選手
世界選手権の1走は、全力でダッシュしても置いていかれる程のスピードレースです。最初のパターン振りを上手く処理できたため前半は集団のスピードに乗ることができ、各国の選手と競い合う非常に刺激的な経験ができました。しかし、オーバーペースがたたり後半は頭も身体も大失速。ミスやスピードダウンが響き、個人目標としていたタイムには届きませんでした。
個人のタイムは悔しいですが、チームとしては厳しい繰り上げスタートと競技時間のハードルを秒差でクリアし3人で完走でき、とても嬉しかったです。誰もがチーム完走のため全力を尽くし、166分をドキドキしながらも楽しめました。リレーの醍醐味を味わわせてくれたメンバーに感謝します。
女子2走:盛合美誉選手
まず、私は今回日本のトップ選手である稲毛、インカレ入賞者の村田と一緒にリレーができたことをとても誇りに思います。1走では稲毛がスペクテーターまでトップと2分差で他国についていき、その後失速してしまったものの、日本のトップバッターとしての役割を果たしてくれたなと感じました。
2走の私は周りにあまり人がいなく、孤独なレースとなりましたがとにかく冷静に大きなミスをしないように走りました。また、今回はウムスタートの時間がとてもシビアで、ェンジオーバーできるかどうかの瀬戸際でした。小さなミスがいくつかあったものの、次につなぎたいという気持ちで走りました。自分の中のレースとしてはこれまでの国際大会のリレーの中では1番いい走りができたと感じています。チェンジオーバーはウムスタートとほぼ同時にすることができました。最後までリレーをつなぐことが目標だったので、村田にチェンジオーバーできた時は嬉しさでいっぱいでした。本当は村田には絶対にチェンジオーバーするから安心して待っていてほしいと言いたかったですが、まだ実力が及ばす、そのような言葉をかけてあげられなかったことが申し訳なかったと感じます。村田は初めてのWOCでリレーが最初で最期の出場種目でしたが、大きく崩れることなくレースをこなし、競技時間もシビアでしたが競技時間の3秒前に帰ってきて3走というプレッシャーの中いい走りをしたと思います。
また、先日蜂に刺されたことでご心配をおかけしました。日本チームのサポートのおかげですぐに回復しリレーに臨むことができ、メンバー、コーチに感謝しております。チームのみなさん、日本で応援してくれたみなさんありがとうございました。
女子3走:村田茉奈美選手
今回、初めてのWOC出場、そしてこのフォレストリレーが唯一の公式戦。緊張も少しありましたが、1週間以上前から現地入りしていたこともあって、ようやくレースを走れることが楽しみでした。
ウムスタートに間に合うかとても際どいところでしたが、稲毛さんと盛合さんが「むらみにつなぐ!!」と言ってくださっていて、ドキドキしながらも信じて待っていました。しかし、2走の盛合さんがあと2分ほどで来るという情報を聞き、チェンジオーバーゾーンに入ってすぐのこと。スタッフたちが動き出し、待機中の女子選手が全員呼ばれ、地図が配られ出し、なんとウムスタートの準備が始まったのです。いやもう盛合さん来るよ!待って!とは言えず、私はラスポのほうを気にしながらずっとソワソワ…。と、その時。盛合さんがラスポに現れ、思わず私は「JAPAN!」と叫びました。それを見たスタッフが、貴女はタッチしていいよ、チェンジオーバーしていいよ、と。嬉しさでいっぱいになりながら、こうして無事チェンジオーバーすることができたのです。そして、日本がチェンジオーバーした瞬間、スタッフの合図と同時に有無スタートとなりました。本当にシビアな戦いでしたが、バトンをしっかり繋いでくださったおふたりに心の底から感謝しています。
私個人のレースとしては、特に大きなミスはなく、良くも悪くも無難な感じにまとまったと思います。60分切りを目標にしていたので少し悔しいですが、ペナすることもなく競技時間内(あと3秒でした)に完走し、日本チームとしての記録を残すことができ嬉しいです。
稲毛さん、盛合さん、JAPANチームの皆さん、そして応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
男子1走:寺垣内 航選手
序盤は集団の最後尾でもいいので、ポスト番号をしっかり確認しつつ、正しいルート(集団)をしっかりと見極めることを心がけました。1か所ルートミスをしてしまい、若干集団から遅れてしまいましたが、コース全体の1/3の会場通過までは、集団の最後尾付近に付けるといった展開でした。会場通過後は長いレッグやアップダウンの激しい山塊でのオリエンテーリングとなりました。一人旅になった区間もありましたが、諦めずしっかり粘りのオリエンテーリングをやればまた集団は見えてくるという気持ちで、オリエンテーリングに集中することを心がけました。実際にヤブや登りのエリアではミスをする選手も多く、数人の集団になったり一人になったりといったことが続きました。
数ヵ国と競っている状況で次走者(2走)の結城選手にタッチできたことは良かったと思いますが、手短に次走者にコース情報を伝達するという点については、十分な役割が果たせませんでした。また中盤~終盤にかけてフィジカル的に失速してしまったことが課題でした。個の力を上げることはもちろん、情報伝達を上手にやることでもっと上を目指せると思います。
チーム力の総決算がリレー競技と考えており、今年のチームは事前の情報共有や雰囲気はかなり良いと感じていたので、ぜひ良い結果につなげたいと考えていました。結果として、近年の中では良い順位ということで、そこは嬉しい気持ちもあるのですが、それでも26位/38ヵ国。これが現時点でのJAPAN(男子)の実力です。今回の反省を次回以降にしっかり繋いでいきたいと思います。
たくさんの方から応援、観戦、支援を頂き、本当にありがとうございました。
そして共に準備を進めてきたJAPANチームの皆さま、一緒に走ったチームメンバーの結城選手、小泉選手に感謝したいと思います。
男子2走:結城 克哉選手
1走の寺垣内さんがいい位置でつないでくれたので、その勢いを伝えたかったですが序盤にリズムに乗れず、一部の国に置いて行かれてしまったのが一番心に残っています。
3走の小泉さんにベルギーやアメリカなどの中堅国と競れる位置で、ちゃんとチェンジオーバーできたので、最低限の仕事はできたと思います。
情報伝達と、ターゲットレース前のフォレストでのレース感覚付けを課題に感じました。
1走から3走まで、お互いの実力を認めあい、自分の持ち場で力を発揮できるいいチームでした。
社会人になって、会社を長期間休んで世界選手権に参加することに自信がなかった自分にとって、大きな転機となる遠征でした。参加を後押ししてくださった職場の方々、コーチ・サポートの方々、そしてチームメンバーに感謝しています。応援ありがとうございました。
男子3走:小泉 成行選手
周囲のチームの動きをうまく利用しながら堅実に、しかし攻めるところは攻めるリレーらしい走りができました。悔やまれるのは終盤のルート選択で、欲を言えばもう1つ順位を上げたかったです。
以前より選手間の情報伝達がしづらい厳密な運営が行わるようになりましたが、コーチングゾーンの活用などチーム戦略を見直すことでもう少し順位をよくできる点があるように感じます。
コメント終わり
また、リレーの優勝争いでは、男女ともに非常に盛り上がる展開を見せていました。
女子はスウェーデン、スイス、フィンランド、ロシアが1走で熾烈な首位争いを見せますが、2走まで終了した時点でスウェーデンとスイスの一騎打ちに。スウェーデンは昨年度のWOCリレー覇者。アンカー両国ともエースでスウェーデンはスプリント2位のToveAlexanderson、スイスはスプリント3位のJudith Wyder。レース終盤まで首位を激しく争いますが、最後はスイスが走り勝ち、15秒差で優勝を決めました。
男子はさらに熱い展開で、2走終了時点で1’30差の間に10か国がひしめく集団走状態。
各国のエース対決の中、一時期は開催国ラトビアが首位に立ち会場が大きく沸くシーンがありました。
勝負が決したのは最後のロングレッグ13→14で、唯一直進のルートチョイスを選択したノルウェーが先行し、4秒差で勝利を収めました。
終盤の集団走は動画に残っていますので、ご覧ください。
https://www.facebook.com/WorldofO/videos/10160794350830541/?hc_ref=ARTdan04XdLKJ6SDHskxYMLKTkRXk7zH9tU9mEeqUAPOkGILjAOLWSMKmRvWDjJd_GA&fref=nf
以上です。
次は、ついに最終種目のロング。日本からは男子は小泉成行選手、女子は稲毛日菜子選手が出場します。男子16.1km、女子9.9kmの超ロングコースですが、二人の選手が力走してくれます。
引き続き応援よろしくお願いいたします。